虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

レッド・アイ


 かれこれ20年まえ、私がアラサーだったころ、
さる病院を退院した祝いに旅行して、
東京の某所での飲み会に参加した。



 2次会(カラオケ)のとき、
男女各2名の一同(私も含めて4人)に
病院で私が書いた患者の似顔絵を見せたところ
美大に通う女の子が「上手い、私にはわかる」と
言ってきた。



 彼女の心を、私は自らはしらず
鷲摑み(わしづかみ)にしたようだ。
恋する女性は、結構態度に表れる人が多い。
口調、態度ではっきり判る。



 その彼女が薦めたカクテルが「レッドアイ」。
ビールをトマトジュースで1:1に割るという一品。
「そんなの美味しいわけない」と私、
「試してみて」と彼女。



飲んでみると、確かにこれはイケル。
「美味しいね、これ」と私。
満面の笑みの彼女。
その後、お開きになるまで
どんな会話をしたのかは忘れた。


でも、楽しい会もお開き。
「もっと飲もうよ」という彼女に
当時出版していたMY詩集(病院体験を綴ったもの)をあげて
サヨナラした。


 でも、その詩集には私の住所は書いてなかった。
もう、彼女は家庭を持っているだろう。


かつて、旅先で出合った素敵な女性と深刻な破局に陥ったこともあり、
旅先で出合った異性には、深入りしない
との方針があったのだ。・・・私には。


それにしても、レッド・アイを知ったあの夜は
スリリングだったね。
2人の男女の出会いと別れが凝集されていたから。


昨夜は久しぶりにレッド・アイを飲んでみた。
やはり美味しかった。
教えてくれてありがとう、Yさん。