新旧小説家の男女別好き好き度(F値)
09.10.25日付けの読売新聞で、「読書週間 本社世論調査」の記事が挙がっていたので、おお、これは面白いと見てみました。統計的な操作をされていて、まあ、信頼に足る調査だとして、「好きな作家・著者」という一覧表に注目しました。上位23名の小説家の順位と回答者総数と男女別回答数が挙がっています。私はここで、作家それぞれについて、
F値=(女性の回答者数)/(全体の回答者数)*100(%)
という指標を導入します。Fとはもちろんfeminine(女性)の略称です。現代にあって、男性より女性のほうが元気だなあ、と思って、F値でその作家の現代的評価を代弁させようと思ったのです。(調査対象は全国の有権者3000人、250地点、層化二段無作為抽出法:有効回収1801人、回収率60%)
ではF値も付した表
作家 女性 男性 全体 F値(%)
1)司馬遼太郎 19 53 72 26
2)村上春樹 35 31 66 53
3)東野圭吾 42 21 63 67
4)松本清張 27 22 49 55
5)宮部みゆき 26 7 33 79
6)太宰治 15 14 29 52
7)夏目漱石 9 18 27 33
7)西村京太郎 15 12 27 56
9)赤川次郎 20 2 22 91
10)五木寛之 11 10 21 52
11)藤沢周平 10 9 19 53
12)吉川英治 6 12 18 33
13)瀬戸内寂聴 16 0 16 100
13)山崎豊子 10 6 16 63
13)渡辺淳一 12 4 16 75
16)向田邦子 13 0 13 100
16)山本周五郎 9 4 13 69
18)芥川龍之介 7 5 12 58
18)池波正太郎 4 8 12 33
18)伊坂幸太郎 5 7 12 42
18)内田康夫 7 5 12 58
22)井上靖 3 8 11 27
22)川端康成 8 3 11 72
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(F値平均)58.6%
また標準偏差20.8%
ここで、F値平均は大体60弱、基本的に女性のほうが好きな小説家の頭数が多いようです。
そして、小説家によっては、F値が大きくぶれることがあります。
一覧表から解るように、たとえば司馬遼太郎はF値が26と低く、このひとの場合に限らず、池波正太郎、井上靖、吉川英治など、歴史小説を書く作家については、女性より男性のほうが好む傾向があるようです。そうすると、「歴女:れきじょ」の人達は、どんな歴史小説を読んでいるのか、気になりますね。
対して、女性の支持が多い=F値が高い場合は、極端に男性からの支持が少ない傾向があります。赤川次郎(F値=91)、宮部みゆき(F値=79)、瀬戸内寂聴(F値=100)、向田邦子(F値=100)
これらの小説家は、男性はほとんど評価してないようですね。
ただ、意外だったのは、反道徳的な太宰治を好きとした人は男女半々!!いたということです。こんな自殺も一人でできないデクノボウのどこがいいのでしょうか?また、三島由紀夫がランクインしていないのも意外でした。
以上の考察から、一つの仮説をたてると、F値が40−70くらいに収まる小説家は、間違いなく、好みの男女差が少なく、普遍的な作家であろうということです。(正規分布からすると、平均値+−標準偏差なら、F値が37.8〜79.4の範囲でおおむね68%の試料があることになりますが、F値の分布は男女半々の支持率の50から見て、大きいほうにずれているようです。また、F値の37.8−79.4に収まる試料の%は70%で、だいたい正規分布に従っているようです。)
今日のひと言:私の好きな小説家、「梶井基次郎」とか、W中島・・・「中島敦」とか「中島らも」とかは、この表のなかに入っていないのが、少々残念ですね。
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