虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

あきれたチャリティー

 *あきれたチャリティー

 最近、こんなニュースにあきれました。

ハリウッド女優とのキス1回1200万円!寄付のためなら体張る
10月27日 01時16分  (アメバ・ニュース)
女優シャーリーズ・セロンさん(34)とキスをする権利が、14万ドル(約1200万円)の価格がついた。

 セロンさんは先日、米サンフランシスコで行われたチャリティーオークションに出席。最初は3万7000ドルからスタート。その後、7回も値がつり上げられて、最後に競り落としたのは女性だった。

 セロンさんは「きょうはボーイフレンドはここに来ていないから」と、この女性と20秒間の抱擁とともにキスを交わした。チャリティーとあらば、欧米のセレブたちはこのように惜しみなく体を張っている。

 この収益金は、セロンさんの故郷の南アフリカの恵まれない人にサッカーW杯の観戦チケットをプレゼントするために使われる。

このようなオークションとかコンサートを、欧米、とくにアメリカの芸能関係者は好んで行います。チャリティーと名が付けば、向かうところ敵なし?


 でも、私が不快に思うのは、このような私的な行為、キスなどといった行為を、なんで世界の恵まれない人への恩恵に転嫁できるのか、ということです。この辺、チャリティーという英語は日本語なら「慈善」と訳するわけですが、この言葉、「慈しむ・善くする」といった、直接、貧しいひとへの慰撫行為を指すわけですね。チャリティーという言葉はラテン語で「愛情」が原意だそうです。(研究社:New college English-Japanese dictionary)


 もちろん、それは自己満足です。キス権を獲得した女性、レズかどうかはわかりませんが、そのキスに1200万円も出資したわけですね。


 自分は極楽にいて、地獄にいる人たちに援助の手を差し伸べる・・・これは僭越(せんえつ:あつかましい)だなあという印象を持ちます。持てる国の国民が持たざる国民を「哀れんでする」驕り(オゴリ)かと思います。
  

 関連過去ログ:チャリティー(Charity)の偽善(Masqerade)
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20070316



今日のひと言:キスを交わしたお二人さんが、それが元でエイズにでも罹るようなら、それだけの危険を冒した・体を張ったという意味で、賞賛します、私。さもなければ、ただの先進国民の「オゴリ」に過ぎないのです。ああ、不愉快だ、このニュース。こんなオークションが、なんら疑問を持たずに行われるという事実も、です。この種の行為は慈善ではなく、偽善だと思います。


もっとも、実際にお金を落とす富裕層のほうが、私のように「偽善」だと批判する人より、世界の恵まれない人たちへ恩恵をもたらすものかも知れません。富裕層の有り余るお金を金欠の人たちに還流するという意味では、無価値ではないのかも知れません。それにつけても、やはり不愉快なニュースです。


チャリティとイギリス近代

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輝いて生きる 95歳×2―チャリティーフォーラム 講演と対談

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