虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

アイスプラント・・・今話題の新野菜とシュウ酸

アイスプラント

 今年になって、「アイスプラント」の話題がネット上を賑わしています。私も、昨年の「タキイ種苗」のカタログに惹かれて購入し、3株アイスプラントを栽培しています。


 この野菜の面白い点は、多肉植物の一種であり、光合成の方法で言うと、C3植物なのに、条件によってはCAM植物になることがまず面白いです。(ほかにC4植物というのもあり、この3種類の光合成法を植物は採ります。CAM植物は、砂漠などの水分が乏しい環境で育つ植物・・・いわゆる多肉植物が採用する方法です。詳しい説明はwikipediaなどをご覧ください。)


 また、栽培に塩を必要とする点も変わっています。通常の植物なら、栽培不可能な条件で成育するのです。その耐性は、海水程度の塩分濃度にも耐えられるほどです。だから、ハーブとして栽培していても、塩分の補給が必要とされます。この植物の栽培に使った土は、塩抜きしないと他の植物には使えないでしょうね。学名:Mesembryanthemum crystallinum  (wikipediaより)


  これなら、土壌中の塩分が高い房総地方でも栽培できるでしょうね。
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20070213 海っ子ねぎ:塩を侮るな


そして、これを生でサラダにして食べると、水分と植物組織が渾然一体となる珍味が味わえます。もちろん、ほのかに塩の味もします。この水分とかミネラル分を含んだ部分が植物体上キラキラと光るので、アイスプラントと呼ばれるようになったのです。そのほかに炒め物、テンプラなども試してみました。テンプラがベストだったと思います。水の味・・・ガランドウな虚の味と言ったところでしょうか。写真は「炒め物」。


 この植物、分類上「ハマミズナ科」に属します。もっとも、この「ハマミズナ科」、それまでよく使われた分類・・・「ツルナ科」に置き換わって科名になって、日は浅いです。だから、植物好きな人の間でも、呼称が混乱しています。



上の画像↑リトープス
アイスプラント南アフリカ原産、多肉植物の宝庫の地から来ました。多肉植物にも、「ハマミズナ科」の植物は多くあり、以前は「メセン(女仙)科」と呼ばれ、イシコロのようでいて、なにやら女性性器を思わせる「リトープス」類がいろいろ生息しています。←「いしころ草」とか言った意味です。花が咲かない時期、本当にイシコロと紛れるのです。それで、このリトープスに関する本が戦前、発禁(発売禁止)処分になったとか。女性性器を連想させるので・・・というウソのようでホントの話が伝えられています。


 そして、これは私の危惧なのですが、「ハマミズナ科」の草のうち、日本で食用とされる「ツルナ」、これはシュウ酸の含有量が相当多い野菜です。



 同じ科の植物には、相似た特徴があるのだとすれば、「アイスプラント」にもシュウ酸が含まれていても可笑しくありません。かじると、確かに酸味がして、これはリンゴ酸であると言われますが、シュウ酸の酸味も混じっているかな、と。類例をあげれば、アカザ科の植物・・・例えば・・・アカザ、オカヒジキ、ホウレンソウ、ビーツ、グッド・キング・ヘンリーなどは揃ってシュウ酸を持っています。タデ科でも、ソバ、ギシギシ、イタドリなどの植物はシュウ酸を含みます。同じ科の植物は、お互い似通っているのです。


 美味しいから、珍しいからと、一種類の植物ばかり食べるのは危険だと思います。シュウ酸は、体内でカルシウムと結合して尿路結石の元になります。それへの対抗策としては、シュウ酸と結合するカルシウムを多く含む鰹節などと食べたり、ミルク煮にしたりすると良いようですね。


なお、アイスプラント、日本に紹介されて日も浅いにも関わらず、作物としての異名が多いです。バラフを初め、クリスタル・リーフ(佐賀県)、ソルティーナ(静岡県)、フィコイド・グラシアル(フランス)。次世代のホープ野菜といったところでしょうか。


今日のひと言:そう言いつつ、新しい作物に興味を示す私・・・進歩がないですね。


ハーブを取り上げた過去ログ
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20051215 ナスタチウム
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20051227  セージ
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20060110  タイム
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080506 グッド・キング・ヘンリー
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20081013 ヒソップ
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080928 ホアハウンド


サボテンと多肉植物を楽しむ本 (趣味の教科書)

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