かつて「幸福の科学」の総裁、大川隆法氏をけちょんけちょんにけなす「大川隆法の霊言:JICC出版」を共同で上梓して、私を散々笑わせてくれたのですが、一方で、危険な宗教団体「オウム真理教」に肩入れして、世の中を唖然とさせて株を下げた島田氏の近作です。
開祖がいて、人間がだんだん集まってくることから、すぐに新宗教のゼニ勘定が始まります。その宗教の教義についてはこの本では触れられず、もっぱらゼニ勘定のお話です。教義に関係なく、ビジネスとしての宗教を扱います。
意外なことに、創価学会は健全なゼニ感覚を持っているためか、発展途上には「会員費は無料」でした。いまでも、たとえ池田大作の「人間革命」がいくら売れようと、それは会の金庫におさまるのだとか。結構ピュアーな感覚ですね。このあたりは好感を持ちます。でも池田大作という一個人を本尊とする創価学会には警戒心を持たざるを得ません。それでも、創価学会は、全権威と富が教祖に集中する麻原彰晃のオウム真理教よりはまともです。警察にがさ入れされた際、麻原はサティアンの屋上で、お金を必死に抱えていたというのには笑えます。
また、最近の新宗教で一番ヒットしているように見られる「真如苑:しんにょえん」の場合、お布施にあたる歓喜(かんぎ)の制度があって、だんだん「お金」が余ってきます。そのころに大神殿を建てて、宗派のシンボルとして会員のアイデンティティを喚起するわけです。
創価学会も、日蓮正宗・大石寺(だいしゃくじ)の施設を建立することにしたのですが、ほんの短時日で必要な資金が集まりました。創価学会と大石寺が決別した今となっては、シンボルではなくなってしまいましたが、学会側はびくともしていません。ただ、熱狂的な信者だった父母の世代から見ると、息子・娘の世代になると、信仰が希薄になっていくという話もあり、維持には苦労するとか。なお、初代の会員は、地方から出てきた田舎者で、ちょうど共産党の党員になってもおかしくない感性を持っていました。(←この一文は私の私見です。)
「お金が余る」というのは新宗教が避けて通れない関門ですが、これがうまくクリアーできないと、新宗教は自滅に向かいます。そこをどうするかが、宗教運営者の腕の見せ所です。
以下、この本のめぼしい点を思いつくままに書いて見ましょう。たとえば、旧宗教の「佐野厄除け大師」は、モータリゼーションの普及を見越して、先代住職が環境整備したのです。(いわゆる「蓮密」の系統の寺院。)
また、ダスキンの産みの親の発想は、「貴方の家のトイレ掃除をさせてください」といって見知らぬ人の家に上がりこんだ、一燈園(財団)がもとにあるとのこと。
生活一切を共同体に預けて農作業にはげむ「ヤマギシ会」についての記述もあります。これは、完全に自己完結したコミューンを目指したものであり、献金というよりは、生活基盤の共有を狙った活動です。私から見ても、結構魅力的な団体です。
この「新宗教ビジネス」の場合、島田氏はどんな宗派に対しても、公平な態度を持って解説しています。反省したのでしょうか?まあ、ゼニ勘定のお話なので、教義については書かなくても良かったのかもしれません。
今日のひと言:今回のブログは、読み込みが甘いです。だからこのブログは書評ではなく、感想文にすぎません。
なお、なぜ宗教法人に関する税率が安いか、ということについては、今回紹介した本の40Pに、以下のように書いてあります。
宗教法人の収益事業の税率が一般よりも低いのは、事業を行い、そこから上がる収入を得ることが主たる目的ではなく、あくまで宗教法人を支えるために営まれる事業だからである。宗教法人法の特徴の一つは、「性善説」の立場に立つところにある。国民の道徳基盤を支える宗教は、法に反するような行為に及ぶことはないということが前提になっている。しかし、収益事業の税率が低いことも、宗教法人が優遇されている証拠と見なされることがある。
「オウム真理教」には、宗教法人法が裏切られたのですね。この教団については「性悪説」が成り立ったのですから。
- 作者: 米本和広,島田裕巳
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