自然農法家・福岡正信さんの2つの死
私が福岡正信さんを知ったのが大学時代、反公害の「自主講座」に参加している、一種の活動家だったころです。(とは言っても、ゲバ棒を振り回すのではなく、環境がどれだけ汚れているか、それをどうするか、などについて手賀沼、霞ヶ浦などを調べていました。)
私の専門は「水」であるけれども、環境の問題を語るとき、避けてとおれないのが「土」でした。だから私は、農業にも関心を持ち、茨城県の農家に手伝いにいったりしていました。その上で、目標となったのが、福岡正信さんと彼の生み出した自然農法でした。
「不耕起、無肥料、無除草、無農薬」の4つの眼目を備え、堂々と彼の自然哲学を展開することについては好感を持って受容したものです。
ところで、その福岡さんが亡くなった2008.08.15日を期して福岡正信さんに関するブログを調べていたら、「大物」が引っかかりました。以下のようなショッキングな事実でした。
そのブログによれば、福岡さんは「乾燥鶏糞」を使いながらも、「無肥料」栽培している、と言っているのです。それも、本そのもの(春秋社版の)「自然農法・わら一本の革命」にはっきり記載されているというのです。
うーーん。他の出版社から出ている「自然農法・わら一本の革命」(柏樹社)を調べてみたところ、この本の場合、53ページに、「乾燥鶏糞」を使うと、ちゃんと出てきます。これで「無肥料」と名乗るのはサギでしょう。
もっとも、私がこの柏樹社の本を読んだかぎりでは、「無除草」・「無農薬」については、はっきりとは書かれていませんでした。それにあたる部分は、63ページに書いてある「作物の足もとに緑肥を播いて、雑草の種をきる。」でしょうか。これは除草剤の範疇に入らないと思います。
だから、福岡正信さんの農法は、「無肥料ではない」ことが彼の著作上、言えます。
私が、この本をはじめて手にしたとき、これほどスラッとさりげなく「鶏糞を撒くこと」が述べられているとは思いませんでした。私はこの本に、環境問題の解決の糸口を見出すと同時に、「現代の老子」という彼の名声に惹かれ、実際に「老子」を読むようになったのですが、この有様だと、彼は一度死に、私の中でもう一度死ぬことになりました。2重の死。T_T
今日のひと言:福岡正信さんは、一種の「RIDDLE:謎掛け者」として記憶することになると思います。私の中では。
なお、春秋社版の「自然農法わら一本の革命」を図書館同士の融通で読んでみたところ、76Pから77Pに渡って、殺虫剤のお話が出ていて、彼の息子がいくらか使い、福岡さん自身がどうだかは解りませんが、消極的に推奨する殺虫剤として「200−400倍以上の薄いマシン油乳剤をかけたら、それで結構すんでしまう」と記しています。断固と農薬をつかわないというスタンスではないと思います。農薬についても怪しいと言えます。
(以上追加した記述は、以下にある、私にとっては不愉快なコメントのやり取りのあとでつけたものです。)
家庭菜園の不耕起栽培―「根穴」と微生物を生かす (コツのコツシリーズ)
- 作者: 水口文夫
- 出版社/メーカー: 農山漁村文化協会
- 発売日: 2007/12/01
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 10回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
- 作者: 藤井平司
- 出版社/メーカー: 農山漁村文化協会
- 発売日: 2005/09/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る