私は以前、知る人ぞ知る詩人のサカキナナオに詩を捧げたことがあります。流浪の大詩人相手に勇ましいことでしたが、以下のようなものでした。
P for PaPa,
M for MaMa.
という概要だけの・骨組みだけの詩でした。この詩は、父を称する言葉が中国語も含めて(パパ)成り立つし、母を称する言葉が中国語も含めて(ママ)成り立つことを、私が洞察して、ナナオ氏に捧げたのです。Pは、唇を合わせ、外に発声する語、Mは唇を合わせ、控えめに発声ないし吸音する語。英語でいえばP=Fとしてfather(父)、mother(母)という具合です。ドイツ語でもフランス語でも同様です。フランス語の場合、pereが父、mereが母。(アクセント記号は使わずに)なお、ローマ法王(男性)をPopeと呼ぶのもその一つですね。
あとでナナオ氏が人づてに伝えてくれたのです:「この人は詩人の素質がある、ただ発表できる詩はたくさん作ってもほんの一握りだ、精進しなさい」とのことでした。
今日は「やまとことば」について拙い分析をしてみようと思います。
よく、息子、娘といいますが、息子=結びヒコ(HIK-O) 、娘=結びヒメ(HI-ME)というのが語源です。子供には両親をつなぎとめる機能があります。
今挙げたように、「O」と「ME」をキーにいろいろな家族関係を追ってみましょう。
まず、A(父)B(母) C(Aの兄弟)D(Cの妻)を設定し、
A,Bの子供は息子(MUSUK−O)娘(MUSU-ME)となります。かれらはC,Dから見れば甥(O-I)姪(ME-I)と出てきます。
嫁、婿の場合、嫁(YO−ME)婿(MUK-O)となりこの場合もなりたつようです。
そのほかの例を挙げると、男の子(O-NOKO)女の子(ME-NOKO)
雄(O-SU)雌(ME-SU) おねじ(O−NEJI)めねじ(ME-NEJI)
益荒男(MASURA-O)ぶり 手弱女(TAOYA-ME)ぶり
さらに、をとこ(wotok−o)をとめ(woto−me):「をと」というのは若返るとの意味で、上記2語はその様に若い男女を呼ぶのに使います。(ベネッセ古語辞典」より。)
以上のような表現は、尊属には適用されず、子供の性質を示すような場合に使われるようです。
今日のひと言:中国語の漢字を取り入れて、随分語彙も増えたのでしょうが、その代わりに「やまとことば」がもつたおやかさは随分失われたことでしょう。あ、それから、ある人に指摘されたのですが、「サザエさん」に出てくる兄弟、かつお(KATSU−O)とわかめ(WAKA−ME)もこの規則に従っていますね。
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