大河ドラマにおける兄弟関係(頼朝から信長まで)
半世紀にわたって続くNHK「大河ドラマ」。いろいろな見方が出来ますが、今回は「兄弟関係」に絞って比較・検討していきます。
1) 源頼朝と源義経・・・大河ドラマ「義経」(2005年)より。このケースは、お互いの立場の違いによる軋轢(あつれき:摩擦、すれ違い)が大きいですね。頼朝は政治家、義経は軍人。後白河上皇(法皇)により、検非違使(けぴいし:警察官、裁判官を兼ねた役職。)の官位を授けられた義経は舞い上がってしまい、新たな政治形態を模索していた頼朝に排除・粛清されたのです。(両者異母兄弟)
2) 織田信長と織田信行・・・大河ドラマ「信長」(1992年)より。幼いころ、執拗にまとわりついてくる弟・信行に対し、「いつか殺してやる」と信長はつぶやきますが、実際自分の手を汚して、そうします。「いつか殺してやると言っただろうが」という言葉が、信行がこの世で最後に聞く言葉になります。(両者異母兄弟)
3) 足利尊氏と足利直義・・・大河ドラマ「太平記」(1991年)より。弟である足利(あしかが)直義(ただよし)は、兄である尊氏(たかうじ)にライバル心があり、それを最期まで持ち続けます。一時は、兄の片腕・高師直(こうのもろなお)を殺し、兄の地位を脅かしますが、最期は兄・尊氏の手によって毒殺され、兄・尊氏は「弟を殺してしもうた!!」と嘆くのです。(両者父および生母共通)
4) 豊臣秀吉と豊臣秀長・・・大河ドラマ「秀吉」(1996年)より。秀長は、兄の秀吉をよく補佐しました。関係良好。(両者異父兄弟:母は共通)これは珍しい。
5) 北条時宗と北条時輔・・・大河ドラマ「北条時宗」(2001年)より。兄の時輔は生まれたばかりの時宗を見て「可愛い」といいますが、父は時宗に、「兄、時輔を殺せ」と命じて死にます。そして、元寇の際の過労がもとで死ぬ時宗は、「私はもっとやりたいことがあった」と兄の胸に顔をうずめて死ぬのでした。(両者異母兄弟)
以上のように、いろいろな兄弟関係がありますが、どうも、兄弟同士、第一印象がポイントになるように思えます。この時持った感情がのちのちまでも引き継がれるのです。ある種、宗教的な言い方をすれば、「因果倶時:いんがぐじ」(日蓮宗)であり、若いころの体験から、その後の結果を予言できる、と言った教理です。残忍なのは織田信長、中庸を得ているのが足利尊氏、きわめて優しいのが北条時輔です。
大体、兄が弟を始末するお話が多いなかで、時宗の兄、時輔のみ、やさしく弟を抱擁しています。この脚本が事実だったら、これは日本史上の奇跡と言ってもよいかもしれません。また、足利尊氏のように穏やかな人には穏やかな最期が、織田信長のように荒々しい人には荒々しい最期が待っていると言ってもよいかも知れません。それから、異母兄弟は、おおむね仲が悪いようです。異父兄弟は、幼少のころから生母のもと親しく付き合うため、対立関係が起こりにくいのかもしれません。
参考文献:戦国人名事典・コンパクト版(新人物往来社)
今日のひと言:大体、兄弟の仲が悪いのは、聖書の時代からそうなのです。アベルとカイン。ちなみに、今度のアメリカ大統領選挙で敗れたマケイン(McCain)氏、「カインの息子」という意味なのでありまして、弟殺しの兄がカインでした。
なお、MacないしMcと書いて、「・・・の息子」という言い方があり、敗戦日本でGHQの最高責任者だったMacArthur(マッカーサー)元帥もその例に含まれます。「アーサーの息子」と言う意味ですね。なお、ロシア人の場合、父称(ふしょう)という名乗りがあり、セルゲイビッチという父称を持つ人は、父がセルゲイだとわかるようになっています。
追加
6) 毛利元就の子の3兄弟(毛利元就:1997年) 毛利隆元、吉川元春、小早川隆景は、お互い協力して毛利家を盛り立てた。もちろん、父、母共通(美伊の方)。
7) 徳川家康 このひとのことには不明な点が多い。父が「松平広忠」であることをどれほどの人が知っているでしょう?また、兄弟について、聞くことがあまりありません。何度も大河ドラマのヒーローとして登場しているのに、これはどういったことなのでしょうか。主役級として1983年の「徳川家康」2000年の「葵 徳川三代」などがあるのですが。
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