虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

ロシア政治経済ジャーナル(by北野幸伯)はよく的中する。それはどう

 *ロシア政治経済ジャーナル(by北野幸伯)はよく的中する。それはどうして?





ロシア政治経済ジャーナルを購読するようになったのは、2005年末のことです。
マグマグの一メルマガとしての、また漠然とロシアという国に関心があったからの、
購読でした。

 でも、そのレベルの高さには驚嘆に値するものがありました。私が購読を始めたころは、「新自由主義ハイエク(経済学者)」をやっていて、私もそれについてインスパイアーされてブログを立てました。
  http://d.hatena.ne.jp/iirei/20051217 :福沢諭吉を嗤う(わらう)


 このメルマガの著者・北野幸伯(きたの・よしのり)氏は、日本の大学に見向きもせずに、ソ連(現在ロシア)に渡り、モスクワ国際関係大学を卒業しました。この大学は外交官、KGB職員を養成する超エリート学校です。


今回は、このブログを書くにあたり、北野幸伯氏の著作「ボロボロになった覇権国家アメリカ)」と「中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日」の2作品を読んでみました。まあ、おおむねメルマガと同一趣旨ですね。


北野氏の国際関係論は多岐にわたりますが、ここでは論点をしぼって何故「アメリカはイラクを攻めたのか」について。「大量破壊兵器をもつから」、「独裁制だから、民主主義を移植しよう」と言った意味からでは、当然ありません。なぜでしょう?答えは、「サダム・フセインが石油をドル建てではなく、ユーロ建てで売ること」を宣言したからです。


  基軸通貨という言葉があります。世界的に決済に使われる通貨のこと。これまでのアメリカは、物が欲しければ、ただ単にドル札を刷りましすればよかった。ところが、フセインのような指導者が大勢現れると、ドルは没落し、ユーロが基軸通貨になってしまうのです。それでは、アメリカは経済的にやっていけない。


 アメリカは「潜在的破産国家」であると、北野氏は喝破します。そして、戦争を続けないと持たない、アブナイ国であるとも。北野氏によると、覇権国家には4段階の生育期や・終期があり、アメリカはもうすでに覇権国家ではなくなりつつあり、つぎの覇権国家である中国と戦うだろうとしています。その際ロシアは、武器、石油を中国に提供するだろうけど、自分は両者が争そうことで得られる「漁夫の利」を狙うだろうとも。このように、世界の国家は、いかにして金力と腕力をつけるかに腐心しています。「民主主義」という国際的には無効な概念をいくら練っていても、ダメなのです。実際、中国もロシアも三権分立を形の上で持っているにすぎません。日本はアメリカの魔法に掛けられたのでしょう。これを称して「日本はアメリカの天領=属国」と北野氏は呼びます。でも、アメリカ王が引上げたら、今度は「中国の天領」になるのでしょうか?日本は?


 国益という言葉も非情なもので、たとえイラクでどんなにアメリカ兵が殺されても続々と新戦力を投入するのは、アメリカの国益に合っているからいいという考え方です。



また、国や宗派が一単位として行動するという原理については、他にも指摘している論者もいますが、真理だと思います。
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20061211 :高山正之の視点




今日のひと言:日本の憲法9条について、北野氏は、アメリカが、湾岸で戦争するのを止めてから、憲法を改正すればよい、さもなくばアメリカの犠牲になる日本人兵士も多いだろう・・・としています。合理的で冷静な分析ですね。国の実力は、金力と腕力で計られる・・・金力は経済力、腕力は軍事力。アメリカは金力と言う点で、もう腐れかかっています。なお、「ロシア政治経済ジャーナル」の購読は

 http://www.mag2.com/m/0000012950.html

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ボロボロになった覇権国家(アメリカ)

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隷属国家 日本の岐路―今度は中国の天領になるのか?

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