三笠フーズと「外部不経済」というもの
- 作者: 宇沢弘文
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2008/09/06 12:15 【共同通信】より三笠フーズ社長の一問一答 「心よりおわびします」
「三笠フーズ」の冬木三男社長は6日午前、大阪市北区で記者会見し、「国民の皆さまに多大な迷惑と心配をかけ、心よりおわびします」と謝罪した。一問一答は次の通り。
−社長が不正転売を指示したのか。
「はい、間違いありません。営業から決裁が上がってきて指示した。私の責任です」
−動機は利ざやを稼ぐためか。
「ええ。経営が厳しく、つい。1キロ10数円で仕入れ、35円から50円ぐらいで売った。正規米に比べ10%ぐらい多く利ざやがあった」
−危険性の認識はあったか。
「持っていた」
−不正転売を始めたのはいつからか。
「記憶が混乱している。転売目的で事故米を仕入れ始めたわけではない」(その後同じ質問に対し)「5、6年前から始めた」
−二重帳簿の提出は誰の指示か。
「自分が偽装工作も指示した」
また、ヒドイ、最悪の、食品偽装が発覚しました。猛毒のメタミドホスやアフラトキシンが混ざっていて、工業用にしか使えない(事故米)のは承知のうえで、一般米として売っていたのですね。
確かに利ざやは稼げるでしょうが、事件が発覚すれば、「ハイ、それまでよ〜〜」となることを三笠フーズの社長はどれほど認識していたのでしょう?
さて、ここに、「外部不経済」という言葉があります。宇沢弘文・東京大学経済学部名誉教授が作った概念ですが、たとえば「水俣病」について、割りを食ったのは、水俣湾周辺の住民・漁民と猫であり、それについては「チッソ水俣工場」はしらんぷりを決め込みました。熊本県および厚生省(当時)も右へ習えでした。このように、公害の大本である企業はなにも復旧費をだすのではなく、被害の大半は、被害者の懐から捻出するという、このような状態を「外部不経済」といます。それに対し、環境、住民被害の付けを公害企業が持つという発想を「内部不経済」といいます。外部、内部というのは、あくまで企業を主体に見ているので、しょうしょう違和感はありますが、公害が大問題だったころは適切な表現だったかな、と思えます。今回の事件、農林水産省も罪は重いですね。時代は変わっても、腐敗の構図は変わらないのです。
三笠フーズの場合は、ちょっとケースが違うといえ、資本主義の悪癖が表れているような気がするのです。外部不経済を招いたという一点でね。
ここではてなキーワードより引用。(私が書いたものですが)
計量経済学におけるキーワード。そもそも計量経済学は環境問題を意識して打ちたてられた学問体系である。エコノミー(経済学)とエコロジー(環境学)は本来同一の学問分野であり、資本や利子という概念が登場すると同時に別物になってしまった感がある。その流れを正道に戻すことが期待される。
ある経済的主体が、外部の環境にマイナスの利益を与えているにも関わらず、そのツケを第三者に押付け転嫁することが、外部不経済の意味である。
この概念は、公害問題だけにとどまらず、「耐震強度偽装問題」にも適用可能であると筆者は考えている。「経済主体」は、かならずしも供給側だけではないのでは、と思うのである。
なお、「社会的費用」という言葉も、ほぼ同じ意味に使われる。
宇沢弘文氏の「自動車の社会的費用」は非常に有名。
今日のひと言;利潤を追求するのが資本主義という考え方は、そろそろ止めるべきだと思います。なぜ利潤を上げ続けて、右肩上がりの成長が必要なのでしょうか。三笠フーズの社長は、その意味で資本主義の犠牲者です。
また、総務省と家電各社と各TV局で進めている「地上デジタル化:地デジ」もそれを必要としない人にとっては「外部不経済」です。
- 作者: 室田武,三俣学
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- 作者: 室田武
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以下に述べるブログにTBします。こんどの事件の背景の巨大さがわかります。
憂国世界
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今度の事件を新自由主義の観点から捉えています。