虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

「豊かになれる者から豊かになれ」〜〜トウ小平(とうしょうへい)の戯言(ざれごと)


 まず、以下の引用を読んでください。
http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/sp_jimu/170_2/index.html  (特集:改革加速する中国)からです。



中国の戸籍制度の基本形は、1951年に発布された「都市戸籍管理暫定条例」と1953年の「口糧制度」、さらに1958年の「戸籍管理条例」にさかのぼる。それによって国民は農業戸籍と非農業戸籍に分けられ、都市戸籍の人たちは食糧など生活物資の配給など特典を受けるが、農村戸籍の人たちは都会に移住しても都市戸籍は取れないことになっている。例えば、農村戸籍の女性が都市戸籍の男性と結婚したとしても、本人はもとより生まれた子どもも母方に従って農村戸籍となる仕組みである。2000年人口センサスで中国の都市人口は4億6316万人、農村人口は8億739万人で、それぞれ全人口の36.45%と63.55%だが、ここにいう都市人口と農村人口は、戸籍制度上、都市戸籍または農村戸籍を賦与された人口のことを指し、実際の居住人口とは異なっている。

 具体的には、「常住地での出生、死亡、結婚、離婚、移動を戸籍登記機関に届け出ること…。転出の場合は、都市労働部門の採用証明書、都市への転入許可証を持って常住地の戸籍登記機関に申請し転出手続きを行うこと。常住地の市・県の範囲外の都市に3日以上暫住する場合は、当該都市で暫住登録を行い、離れる時は抹消申請を行う…」と続く1958年の条例は、半世紀が経過した現在もほぼそのまま引き継がれ、都市と農村の垣根を作っている。

 新中国建国初期に政府がこのような戸籍制度を実施した目的は、労働力を農業に引き止めて食糧生産を確保し、物資が欠乏している都市への人口の集中を避けるためだった。しかし、改革開放以降、都市部に多様な経営形態による雇用機会が出現すると、多くの農民が都市に出稼ぎに来るようになる。特に、84年から戸籍制度を若干緩和したことにより、農村余剰労働力が大挙して都市に流入し、市場経済に適した労働市場形成のためには、人の自由な移動を認めるべきだとする主張が広まった。1997年以降は農村戸籍者の小都市への正式移住を認める改革が広東省などで行われ、最近では河北省が都市と農村戸籍の区別をなくし、戸籍の自由化を宣言して注目されている。

 近年は毎年1000万人単位の人が農村から都市へ流入し、流動人口の合計はざっと1億人を上回るとされるが、とりわけ大都市においては戸籍の壁は依然として厚い。大学進学や都市への一定規模以上の投資なくしては都市戸籍の取得は不可能で、彼らは就職、住宅、子どもの教育などの面で差別されており、義務付けられた暫住証を所持していないだけで浮浪者扱いされ、殴打死する例すらあるほどだ。

 それでも農村の人たちが都市に流入する原因は、農業を営んでいては豊かになる望みはなく、医療や年金の制度的保障がない農村にとどまるには不安が多すぎるからだ。後で詳述する中国の医療制度及び年金制度はそれぞれはっきりと「都市部限定」をうたっている。医療や年金制度構築などを筆頭に掲げ、都市部における計画経済時代の遺産の清算を急ぐ中国政府だが、とてつもない人口規模の農村部における作業は、当面後回しの状態である。


トウ小平は、上掲のスローガンを引っさげて、「一国二制度」の中国を導きましたが、なんとその基盤となる人民に差別を設定しています。これは、口でどう言おうとも、隠れもない事実なのです。資本主義、社会主義あたりの話どころか、自国民に2つの階級を設定しているわけです。これが「一国二制度」なのでしょうか?「農村戸籍」のひとが「都市戸籍」を得ることは、現実的には不可能なのですね。
 トウ小平の言を収録した本が手元にあります。「トウ小平は語る」(孔健、山崎金造:広州出版社編:チャイニーズドラゴン新聞社訳)。
その36ページに
 「社会主義の本質は生産力を開放し、発展させ、搾取と両極分離をなくし、最終的にはともに豊かになることである。」

・ ・・と、ありますが、私には実際のところ「豊かになれる者だけ豊かになれ・る」という資本主義の揺籃期(ようらんき:幼少の頃)とあまり違わないと思えます。このギャップには唖然とします。現実に中国には、戸籍による差別が厳然とあり、豊かになれる者は、共産党にコネがある者であり、内陸部の労働力は、海岸部の工場で搾取されているのですから。一国二制度とは、資本主義(貧富の差)と共産主義(特権階級・コネ)の悪い点を集めて成り立つものなのでしょうね。

私はいつか、http://d.hatena.ne.jp/iirei/20070104  をエントリーして、

いわゆる「政治ジョーク」あるいは「スターリン・ジョーク」で、
 「資本主義は人による人の搾取である」と言う教師に
 「それでは、共産主義とは?」と尋ねる生徒がいて
 「その逆である!!」
と答えるお話を紹介しましたが、中国で起きている事態は、正にそれなのです。搾取によって中国は支えられているのです。「社会主義の本質は生産力を開放し、発展させ、搾取と両極分離をなくし、最終的にはともに豊かになることである。」←このスローガンがつまずきの石なのです。


それから、この本、見開き左ページはマンガになっていますが、ここで発展の象徴として、よく高層ビルが挙げられています。高層ビルは、資本主義の悪しき象徴であり、中国も高層ビルを望む風潮があるわけですね。愚かなことです。


今日のひと言:中国はゾンビだ。もはや国家の亡霊であると、私は言いたい。




「一国二制度」下の香港

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毛沢東、トウ小平そして江沢民

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