このマンガは、微生物が肉眼で見える少年「沢木惣右衛門直保」が主役。某農大(ほんとにこの名前の学校)に入学し、その特殊能力を生かして、いろいろな出来事に対処していくお話です。たとえばタカビーな女子大学院生のブーツに白癬菌(みずむし菌)を発見して彼女のはなっぱしらを折り、また、これも驚異的なのですが、男女の2人連れを見て、「あの2人まだ続いているね」とコメントします。その根拠は「微生物の種類と分布が同じだから。」!!・・・・ひえー、おちおち恋愛もできませんね。なんと言っても、微生物が目に見えるのですから。でも、どんな破天荒な設定だろうと、それを前提にして読み解いていくヒトが、マンガの読者たりうるのでしょう。
このマンガの副題に「The tales of agriculture」と付いていますが、醸造学の話題ばかりなので、「The tales of brewing」としたほうがいいかもしれません。実際、ほかの学科の話は出てこないで、水木しげるのマンガのキャラに出てきそうな、微生物教室の大学教授:樹 慶蔵のまわりでお話が進行します。彼は、究極の臭い食品、たとえばキビヤックなどを自ら製作し(なにやらアザラシを埋めてゼミ生の名前を立てておき、すわ、殺人事件か!!となる逸話があります。掘り起こされたブツ・アザラシの体内に埋め込まれた海鳥・を血を垂らしながらほお張る姿が凄絶でした。)、また、北欧の臭い発酵ニシンの缶詰「シュールストレミング」を取り寄せたりします。どうやら彼は、「この世は微生物で回っている」という世界観を持っているようです。どことなく、東京農業大学の小泉武夫教授を連想しますが、著者自身は、樹(いつき)教授にはモデルはいないと言っているようです。どんな分野であれ、大学という場所は、不条理に満ちていると思いますが、このマンガで描かれる微生物教室も同じです。
なお、この作品の場合、「もやす」というのは「モヤシ」のことではなく、「麹(こうじ)」のことを指します。微生物の姿は、画像のように、かなりかわいらしくキャラクタライズされています。種類ごとに工夫をしていて、「これを描きたいからこのマンガを続けているのだな」、と思えます。それから、微生物たちの発言も主人公には聞こえるようです。
「かもすぞ」「かもすぞ」「ころすぞ」「ころすぞ」のように。「ころすぞ」というのは、O−157とかボツリヌス菌の発言です。凄みがありますね。
ちょっと絵柄について感想を書くと、女性の書き分けがあまりうまくなく、登場する女性キャラが、みんな同じ女性に見えることかな。
また、連載当初の題名が毎回ころころ変わったこともすごい。(第一話が「農大物語」第二話が「農大物語もやしもん」と言った具合で、現在の正式名称は第5話から。)主人公の友人として当初に出てきたキャラが、突然出なくなってしまうことも指摘できます。作品の細部の整合性はあまり重視していないようですね。要するに、微生物を語る語り部さえいればよいのでしょう。
作者:石川雅之
講談社:イブニングKC
今日のひと言:微生物=悪玉という認識は間違えだという真理を、この「もやしもん」を読むと解ると思います。やれファブリーズやレノアのCMのように、必要以上の清潔感を煽るのは、どうかしていると思います。
今日のひと言2: 昨日聞いたニュースで、ロシアのプーチン大統領は、大統領を退いたあとも、党首・首相として君臨し、メドベージェフ氏を弾劾できる立場を保持するとのこと。これでは、実質大統領のままではないでしょうか。
ロシアの「民主主義」とはこんなものなのですね。そんでもって、プーチン首相にはラスプーチンの称号をおくりましょう。ラスプーチンというのは、ロシア・ロマノフ王朝の末期に皇帝家を壟断(ろうだん:情報を一人占めすること)した怪僧のなまえです。

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