虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

ソニーとホンダ

わが友 本田宗一郎 (ゴマビジネス)

わが友 本田宗一郎 (ゴマビジネス)

 どちらも、かつてはヴェンチャー企業でしたが、いまではどちらも日本有数の企業に成長しました。創業者の性格も似ています。井深大(まさる)さんと本田宗一郎さんはどちらも技術バカといった感じの人たちで、営業についてはそれぞれ盛田昭夫さんと藤沢武夫さんに任せて物作りに励んだわけです。「わが友 本田宗一郎」(井深大・ごま書房)参照。この本のなかで井深さんは、本田さんのことを語るという行為のうちに、自分のことを語っているようです。それほど、この2人の起業家にして技術者の2人は似ていたのです。
 ところで、(自動車産業には否定的な私ですが、)本田宗一郎さんがきっちり守り、盛田さんたちが守らなかったことが一つあります。


 本田宗一郎さんは、金融関係の仕事を立ち上げようという社員に対し、「「うちは物作り」の会社だ、いらんことはするな!」と断固拒否したという点で、この点損保に手をだした盛田さんとは大きく異なります。2007.10.25号の週刊文春によれば、盛田さんの頃からの念願だった金融のコングロマリット(銀行、生保、損保、証券を包括する)を東証1部に上場しましたが、肝腎のゲーム機が不振なのだといいます。これは本末転倒で、救いようがありません。プレステ3が大赤字なのだそう。そんなことを言い出したら、本業の家電製品はどうなる、という話も射程に入ってきますが。大丈夫なのか、この会社?


 ソニーについては、大学入試センター試験に採用された英語のICプレーヤーの不具合が2年続けて出たことだし、(この件については過去ログでとり上げています。)あまりよい印象はありません。
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20070124



また、ソニー製なら良かろうと思って買った、一代目のデジタルカメラ(サイバー・ショット)が、電池切れの表示がおかしいので修理に出したところ、「直せません」と帰ってきたのには呆れました。名前倒れだな、え、ソニーさん。



 さらに、かなりマイナーなお話ですが、ソニーの工場長だったひとが、「多肉植物の会」の会計係をしていて、横領し、除名になったあと、会のメンバーを引き抜こうと画策して、騒動になったことがあります。これはもちろん、この人本人の問題ですが、そんな人物に工場をまかせていたソニーの体質が厳しく問われるでしょうね。



 物作りに徹した企業と、余所見(よそみ)をして、本業を見失ってしまった企業。
両者の差は開くばかりです。





今日のひと言:私は工学部出身ですが、エンジニアとは呼ばれたくありません。現代文明を支える技術そのものに不信感を持っているからです。環境問題を専攻して、その思いは一段と強くなったのです。その意味で、ホンダもソニーも嫌いです、私。


 でも、本田さんはいいなあ。個人的に。「自分の子どもは入社を認めず」だったですから。