虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

MIXI(ミクシィ)点描 その3  展望

 (MIXI特集  3回シリーズ最終回)
 現在MIXIには600万人以上の会員がいますが、もちろん全員と友達になれるわけではありません。
 マイミクシィというシステムから考えてみましょう。MIXI上の相互に認め合った友人がマイミクシィ(マイミク)ですが、この数が少ないと、私のページを訪ねてくれる人を増やすには、多くのコミュニティー(コミュ)に参加するか、検索を掛けて足跡をのこし、足跡返しにやってくる人と交流を図るしかありません。実際、コミュはその目的にはあまり役に立たないようです。ただ単に、会員の趣味の傾向を、訪れる会員に伝えるだけに止まることが多いようです。だから私はもっぱら検索をしています。たとえば「女性は子どもを産む機械」と柳沢伯夫厚生労働大臣が妄言を吐いたとき、新着日記でこの人をキーワードにしている会員を検索するといった具合です。あるいはプロフ(プロフィール)検索で「俵屋宗達」を自己紹介のなかで挙げている会員を検索したりします。このような地道な検索で、素晴らしい人、ないしは日記に遭遇することがあります。ただ、精密に検索を掛けると、かなり時間を取られます。
 また、マイミクの数が多いなら多いで、問題が起きます。おおむねマイミク50人くらいになると、コメントでは「挨拶」程度の中身のないやり取りが行われる傾向が生まれるようです。誠実あるいは筆まめな人であればあるほど、「挨拶」にかける時間を取られ、あまり生産的ではありません。「お友達同士の内輪話」になりがちです。この設定では、優れたブログが持つ「批判精神」は生まれません。また、MIXIのシステムとして、誕生日を迎えたマイミクへのグリーティング・コメントが推奨されます。これには正直驚きました。マイミクが増えると、やり取りは増えますが、縛りも多くなるのです。
 そうすると、適正なマイミク数というのが考えられますが、大体10人から20人くらいということになると思います。あとはこまめに検索を掛けてヒット数を増やすことになるでしょう。
 このシリーズの初めに書いたように、MIXIは「人」の情報を扱い、HP、ブログは「事柄」の情報を扱います。「事柄」について知りたい場合、SNSMIXIはHP、ブログに劣るように思われます。「事柄」を保存する術をMIXIは持たないのです。新着日記が1週間だけしか保存されないのは、そのいい例です。
 ただ、「人」を知るメディアとしてMIXIが優れていると思われるのは、新着日記をテーマを決めて追って、いろいろな意見を拾い上げられる点です。色々な立場の人が同一テーマについて語っているわけですから、「人」の研究には有益でしょう。ある意味「2ちゃんねる」に似ています。グーグルは例えば「俵屋宗達」そのものの情報を検索するのに対し、MIXIの新着日記では「俵屋宗達」に関して、何人くらい言及していて、どんな見解を持っているかを検索するということになるわけです。
 会員600万人と言っても、ある程度の密度と頻度でやり取りのある会員は一人あたりせいぜい50人いうところでしょう。事実上、その会員にとってはその50人がMIXIに存在する会員の全てです。案外狭い世界であるということになります。「人」の情報と「人」との交流がコンセプトである限り、これは当然の帰結かもしれません。このあたりを私は過去ログ(http://d.hatena.ne.jp/iirei/20061129)で「閉鎖社会」と称しましたが、外れてはいないと思うのです。また、私の場合、知り合ったMIXI会員が再び私の日記を訪れることは少なく、一過性のやり取りがほとんどです。これではわざわざ検索を掛ける意味も薄くなります。
 MIXI自体、これからも会員数が増えるのでしょうか?増えるかも知れませんが、私は、以下の説を立てます。:「MIXIは全体で、1つのブログである。」ID、パスワードさえ入力すれば基本的に
どのコンテンツでも閲覧できるからです。(友人まで公開の日記は除く)600万というのは、大きいとは言え、数字の1つに過ぎません。また、日記同士のTB(トラックバック)が出来ないことも、個々の日記が独立したものではなく、全体で1つのブログであることの有力な証拠になります。さらに言えば、内部に限らずMIXI外部ともTBができないので、ブログの構成要件をも満たさないと言えます。もうひとつ、MIXIの特質を示すこととして、過去ログ(過去の日記)は検索で閲覧できないことが挙げられます。新着日記のように、1週間の期間限定の日記は閲覧できても、任意の会員の任意の時期の日記を閲覧する術はありません。(特定の会員の過去ログなら閲覧可能ですが)こうなると、膨大な過去ログが死蔵されることになり、情報検索という意味では大きな欠点となるでしょう。書き手にとっては情報の書き捨てになります。MIXIは閉じているので、グーグルなど検索サイトで検索することも出来ません。MIXIが直近のチャットをやり取りするメディアとして優れていても、情報の倉庫としての視点に欠けていることの証になるでしょう。
 結論:技術的評価として、精緻に組み立てられていますが、MIXIのシステムは、プログラマーにとって、特に魅力的ではないだろうな、と思われます。
 
今日のひと言:私のブログは最近1日200ヒット以上ありますが、MIXIでのヒットは、こちらが検索を掛けない限り一日せいぜい10ヒットくらいでしょうね。だから、同じ労力をかけるのなら、ブログのほうが優れていることになるでしょう。私はブログの原型をMIXI上にアップして、コメントなどを参考にしてからブログにすることもやっています。私の場合、主なメディアはブログです。

   そして結論:
MIXIから撤退します”
 どうも。昨年12月中ごろから2ヶ月、MIXIをやってきましたが、この度、日記の更新をやらないことにしました。ですから、実質的なMIXIからの撤退をします。(ただし、新着日記の検索とコメントはするかも知れません。)
 その理由は、メディアとしてのMIXIにあまり魅力を感じないことです。たとえば「三橋歌織」について同じ文書をMIXIと私のブログでエントリーした場合、MIXIでは20ヒット、ブログで1300ヒットの圧倒的な差が出ました。同じ労力を使うのであればMIXIよりブログのほうが断然優れているのです。数にこだわっているとの批評は受けなければならないでしょうが、この差は質的なものであると考えます。
 特に最近は、マイミクの方さえあんまり訪問してくれず、一日あたり10ヒットもありません。それに、知り合いになったとしても、一過的な友人で、再び訪れてくれないMIXI会員がほとんどです。検索を掛ける労力も惜しくなりました。
 ブログ「虚虚実実――ウルトラバイバル」 http://d.hatena.ne.jp/iirei/
は以後も続けますので、是非いらしてください。コメントを残してください。(なお、ブロ
グ上で、半月後くらいから、「MIXI点描」3回シリーズをエントリーします。MIXI体験の総括です。)
あなたとMIXI上でお会いできなくなるのは残念ですが、決定済みのことですので、よろしくお願いします。あなたの健康と活躍をお祈りします。
              2007.02.14  森下礼

マイミクなどにメッセージで送ったこの宣言をもって、MIXIでの「受動的な」活動を止めました。受動的と言ったのは、日記を書いて訪れる人を「待つ」ことが、です。テーマを決めて新着日記を検索し、場合によってはコメントを書くことは、逆に能動的であると言えるでしょう。言って見れば、私は「目」と「手」だけ、MIXIの世界に残すのです。