虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

人間活動は土を減らす、大学入試センター試験とソニー

    (土シリーズ1回目。全4回。途中インターミッションが入ります。)



* *水はよごれる、
       土はなくなる。



 案外軽視される土(土壌)は、水よりも希少です。ちょっと試算してみました。理科年表(1993年版)で、陸地と海洋の面積比は1:2.42。また海洋の平均水深は
3795m。陸地の1/3が農地ないし林地とし、その深さを1.5mとします。そうすると土壌の量(体積)は
 1*(1/3)*1.5=0.5(単位)
海洋水の量(体積)は
 2.42*3795=9184(単位)
圧倒的な差があります。
 ただ、海洋水は利用できないので、陸水、とくに河川・湖沼水の量を算出してみます。これには「EICネット」の陸水のデータを利用します。http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=2657

 地球上の水の2.5%が真水であり、そのうち0.88%が河川・湖沼水です。
 だから真水は
 9184*(2.5/100)=230(単位)
 河川・湖沼水は
 230*(0.88/100)=2.03(単位)だから河川・湖沼水は土壌の
2.03/(0.5)=4.1(倍)
河川・湖沼水は、水の全存在量に比べれば少ないとは言え、土壌の4倍ほどの量があることになるのです。仮に以上の設定が変わった場合でも、オーダー(桁)に変化はないでしょう。水より土のほうが希少なのだと、解って頂けましたか?ここで言う土(土壌)とは、作物が栽培可能な、生物相が豊かな用土のことです。
 過去ログで、「陶芸は土を減らす」という趣旨のことを書きましたが、
 http://d.hatena.ne.jp/iirei/20051218
ここではより視点を広げて、「人間活動は土を減らす」という論旨で書いて見ようと思います。明治時代の足尾鉱毒事件、精錬所から出た亜硫酸ガスで森林が枯れ、土壌が流出して、山は禿山になりました。また残滓(スラグ)からは有害金属が下流域に流出し、田んぼは不毛の地と化しました。見事に「人間活動が土を減らして」います。また、いわゆる地球温暖化の問題で、海水面が上がれば、陸地が水没し、有効な農地が使用不可能になります。これも実質的に「人間活動が土を減らす」事例になるでしょう。そうそう、東南アジアの人たちがとても近視眼的だと思えるものとして、「エビが日本で高く売れる」という理由で、立派な水田を潰し、海水を入れて「エビ養殖場」にしている、という事例もあります。確実に自分たちの食糧を生産できる水田を、日本人の嗜好とか経済状況たよりの養殖場にしちゃって、現金収入を当てにするのですから、バカと呼ぶしかありません。そして、彼らの活動は、やはり塩で汚染することで「土を減らしている」のです。さかのぼれば、古代中国、始皇帝兵馬俑、その一体を作る際、どれだけの木材が伐採され、燃やされたことでしょう。乱伐採は砂漠化につながる・・・中国の歴史も、砂漠化・・・土を減らす歴史であったのは確かです。
 工学部の学科の分類では、土木工学、建築工学が先頭に来ますが(東大の場合)、この2つの学問領域ほど「土を減らす」分野も少ないでしょうね。これについても過去ログで触れています。
 http://d.hatena.ne.jp/iirei/20060905
まあ、「人間活動」の代償として「土は減る」というのは、残念ながら真理だと思います。
ただ、この論考の最初でやったように、「土は水より希少」です。「土」がなくなったときが、人間が滅びるときなのだと思います。
 なお、農業という営為をしていても、土を減らす(殺す)場合があります。それは化学肥料・農薬漬けの栽培法を取るときですが、よく考えると、これには化学工業が介在しています。そこでテーゼを立てると、「工業にまつわる人間活動は、土を減らす」としていいようです。私はこれを「人間滅亡の定理」と呼ぼうと思います。(ちなみに、小説家・深沢七郎のエッセイ集に「人間滅亡の唄」(徳間書店)というのがあります。私は深沢の感性に共感します。)




* *水はよごれる、
       土はなくなる。




今日のひと言:中国の古代思想「陰陽五行論」でも、木・火・土・金・水の五行(ごぎょう:世界を作る元素)中、土が最重要とされています。




  *大学入試センター試験とSONY(ソニー

一年前も書いているのですが、今年の大学入試センター試験でも、リスニング用機器の不具合が報道されました。受験生381人が再試験を受けたそうです。一年前は457人でしたから、ほとんど改善されていません。この機器のメーカーを知っていますか?・・・SONYソニー)です。
 大学入試センターは昨年、従来のスピーカーによる一斉放送方式では受験生に不公平が生じるとしてSONY製品の導入を正当化しましたが、結果不公平が生じたのではないでしょうか。ある技術者が数%の率で不具合が生じるのは仕方がない、と言っていましたが、それでは困るのです。 それは不公平なのです。その数%にあたった人と、そうでない人では、その後の試験上の労力に画然と差がつくわけで・・・そのような事態が確実に起こるのですから、ICプレーヤー方式は従来のスピーカー方式に明白に劣るということになります。そこで、「なんのためのICプレーヤー導入か」、という話になるわけです。システムとして問題があるわけです。
 この方針に対し、東大など一部の大学はこの機器を使わないこととしました。恐らく、「不正」の匂いを嗅ぎ取ったのでしょう。と、言うのは・・・
 リスニング機器は松下電器SONY競争入札だったと思いますが、この2社はDVD規格戦争でつるんでいます。かんぐればSONYが受注されるよう談合していたのでは?
 この種の機器はその性質上、同じ製品を使わねばなりませんから、受注メーカーは大もうけできます。もしそうであるなら、一企業の利益を誘導する決定をしたセンターの責任は重大です。誰か賄賂でも貰ったのでしょうか?
 それにしても、SONYもお粗末なメーカーですね。
       SONYの機器で昨年不具合が多発したことは、当時HPで確認しています。ちょっとURLについては不正確ですが「思慮g」というHPで2006年1月22日の項で触れられていました。
 本当だとすると、けしからん話ですよね。
        それにしてもTVや新聞のマスコミ報道ではSONYのSの字も出ません。「どこだ、そのヘボメーカー?」と疑問に思う人がいたとしても手がかりがありません。このように情報を遮断するというのがマスコミ最大の問題だと思います。「発掘!あるある大事典Ⅱ」の納豆問題より悪質だと思います。
        ただこの案件、ウラを取りにくいのでなかなか調べにくいですね。ただSONYは、井深大のころから教育に関心が高く、文部官僚との付き合いもあったでしょう、この辺から切り込めるかも知れません。