虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

ブタとオオカミ(私の地政学)――中華思想の一解釈

 以前、過去ログ(http://d.hatena.ne.jp/iirei/20060203)で書いた、日本陸軍がモンゴルでソ連陸軍に完敗した「ノモンハン事件」(1939年)で、「ノモンハン」とは、モンゴル国内の地名ではなく、チベットラマ教法王(ダライ・ラマ)を指すということを、週刊文春の記事で知りました。ロシア(当時 ソ連)は、日本陸軍を叩き潰すことにより、一挙に中国を飛び越え、チベットまで手にいれたものと考えていたと思われます。中国は眼中になかったわけですね。
 その中国には昔から「中華思想」があり(昔といっても中国の長い歴史の中ではわずかに宋のころからですが)、四辺の異民族を見下してきました。もっとも、それは金や元という異民族による「征服王朝」に武力では圧倒された漢民族が抱いた、文化だけはあいつらには負けないとする心理的反動なのだということですが。つまりは劣等感が起源でした。(井沢元彦「逆説の日本史」参照。)
 日本には「北面の武士」という言葉があります。実際に軍事力を行使する武士が、南面する貴族にかしずくという状況です。この場合、武士は南側から北で一段高いところにいる貴族に対面しています。王者は北から南に臨むというのは、中国から来た慣わしです。ただしその武士(オオカミ)たちがその気になれば貴族(ブタ)をすぐさま制圧するのが可能です。
 漢民族のいう「北狄(ほくてき)」こそがかつてのモンゴルであり、今のロシアです。北狄に備え、漢民族が長年にわたって営々と作ってきた「万里の長城」では、今のロシアが侵攻して来たら防ぎようもないでしょうね。まあ、ロシアから見ればオモチャのようなものですね。だから当時のソ連は「ノモンハン」という言い回しを取ったのでしょう。


* ブタ・・・生活最適地に住み、周囲から人、物を集める、オオカミを見下す
* オオカミ・・・生活条件が厳しく、心のなかでブタを罵りつつ生活する


以上のように類型化してみました。中央をブタが占め、周辺にオオカミがいます。そして、いろいろな発明をする活力は、オオカミにあってブタにはありません。ブタはオオカミに征服される運命にあるのです。これは中華思想地政学的解釈と言えるでしょう。
 北欧神話の「神々のたそがれ(ラグナロック)」というお話でも、ブタである主神オーディンは、封印されていた大オオカミ(フェンリル)に飲み込まれて死ぬ、というエピソードがあります。このイメージを私は持っているのです。
 ちなみにアメリカ合衆国も私の分類ではブタです。フランスも限りなくブタに近いです。対するドイツがオオカミといったところでしょうか。おおむね、大陸の生活最適地にある国をブタ、その周囲にある国をオオカミとします。
 以上、ブタとオオカミ(中華思想からの類推)による地政学です。日本は東夷と呼ばれたオオカミです。地政学についても過去ログで複数回取り上げています。以下を参照してくださいませ。
  http://d.hatena.ne.jp/iiei/20051208
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20051212



今日のひと言:それにしても中国はロシアには低姿勢だ。2年前、化学工場の事故でアムール川
       汚染して、ロシアに迷惑が掛かったとみるや、再発防止の法整備をすぐに
       やった。日本が相手なら、絶対するまいに。中国が原因の異変はいろいろ起きていますが、(酸性雨、汚染された黄砂、クラゲ、日本各地の密漁、金属の盗難、その他いろいろ)中国が日本になにかお詫びでもしましたか?それにしても、この前の冬、ロシアを大寒波が襲ったのは、じゃんじゃんエネルギーを消費する中国の
       せいではないと、誰が言えようか。2チャンネルでそんな論調を見たぞ。もっとも、アメリカの下手糞な外交のせいもあり、最近両国は仲がよく、「上海協力機構」というユーラシア大陸を覆いつくす規模の同盟の仲間同士です。これは地政学的に要注意である同盟です。ただし、中国とアメリカが戦争になったとしても、ロシアが中国に手を貸すとは限らない。漁夫の利を狙うのではないでしょうか。以前も触れたように「民族は、その民族のためにのみ行動する」のです。
       http://d.hatena.ne.jp/iirei/20061211高山正之の視点」


       
        中国の宇宙技術が「ハリボテ」であることについて以下で触れています。
        http://d.hatena.ne.jp/iirei/20060112