虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

ラム酒とインディアン

   民族シリーズ その3
  (4回に渡る「民族」特集。途中2回、インターミッションが入りました。3回目。)
 ヨーロッパから白人が北米に渡って来た時、彼らの目的は、農地としての土地の確保でした。その場合、土地の私有が大前提となります。一方でネイティヴ・アメリカン、すなわちインディアンたちは、土地私有の概念を持ち合わせていませんでした。この出発点の違いが、両者の明暗を分けます。
 最初のイギリスからの移民は、新しい環境で生きていく術を知らず、インディアンたちがいろいろ教えてあげたのですが、イギリス移民たちは、インディアンには感謝せずに、彼らのキリスト教の神に感謝をささげました。これこそがサンクスギビングの始まりです。そして彼らは、次第にインディアンたちを圧迫しはじめます。
 落雷の凧実験で有名なベンジャミン・フランクリン(1706−1790)は、以下のように述べています。「ラム酒+野蛮人=0」(アメリカ・インディアン悲史91P:藤永茂:朝日選書)どんな意味かというと、インディアンたちは強い酒を知らなかった、その彼らにアルコール度数の高いラム酒を勧めれば、ぐてんぐてんに酔っ払い、その時に土地の譲渡証文を書かせれば、土地は苦もなく白人の手に落ちる、なぜなら、酔いが醒めて抗議しても、証文にサインしてあるから、抗議は無効になるという寸法です。そしてインディアンは身ぐるみ剥がされ滅亡する、というのが上掲の等式なのです。そもそもインディアンたちの間では、証文なんてなかったはずですが。フランクリンも相当な悪党ですね。
 アメリカ合衆国初代大統領ジョージ・ワシントン(1732−1799)も、積極的にインディアンを追い詰めました。彼もフランクリンと同じく、聖人君主ではなく、奴隷の黒人女性の小屋に出向いては、SEXして、私生児を量産していたそうです。その際引いた風邪がもとで命を落としてしまうそうです。自業自得ですね。彼はタバコ栽培で財をなし、そこで使役していた黒人女性を犯していたのです。タバコのヴァージニア・スリムで名高い地方のお話です。(アメリカ・インディアン悲史110P)
 ただ、インディアンたちがイギリス移民の危険性に気づいた時には、もはや手遅れでした。人口の上でもイギリス移民はインディアンを上回りました。そこでますます白人の「土地を略奪する」という性格が存分に発揮されるのです。インディアン側でも、反抗の英雄が多数現れましたが、ことごとく打ちのめされ、インディアンの衰亡は決定したのです。少なからず、身内の裏切りで悲惨な最期を遂げた例もあります。その英雄の鳩首は、長いことさらし者にされました。名を挙げると、キング・フィリップ、テクムセ、セコイア、ジョン・ロスなど。この中でセコイアはアルファベットを元に独自の文字を開発し、チェロキー・インディアンの識字率を高めたほど知性があったそうです。
 以上の略奪の経験はスペインから掠め取ったフィリピンの統治にも活用されたのは言うまでもありません。太平洋戦争後、フィリピンで日本軍が働いたとされる残虐行為をアメリカは断罪しましたが、高山正之氏によると、アメリカがフィリピンで働いた残虐行為は、その比ではないとのことです。


今日のひと言:ディズニー映画の「ポカホンタス」という、白人のリーダー格の男性と結婚したインディアン女性のお話は、半分ウソらしいです。確かにその名の女性が白人と結婚したのはそうらしいですが、ただの住民の一人が相手らしいです。このフィクションは、白人たちにその行為を正当化する口実を与えました。(というか、隠蔽する効果がありました。)