「ためしてガッテン」の「味噌」観
味噌という食材には関心が高いので、06年5月31日の「ためしてガッテン」の「常識逆転!みそパワー新活用術」なる特集を見て見ました。そこでは私が持つ「味噌」観とは相当に違う世界が展開されていました。特集の目玉は2つあり、1つ目が「味噌を隠し味に使って食材の味を良くする方法」、2つ目が「香りの乏しい味噌の香りを良くする方法」でした。
1つ目は、肉なり魚なり、食材100gを、30gの味噌を10gの水でゆるくしたものに漬けて1時間置き、調理に入るというものでした。このような調理をする根拠は、味噌にはたんぱく質分解酵素が含まれており、素材を柔らかくする点にあります。わざわざ実験装置を使って実際に柔らかくなることを実験していましたし、人に食べてもらってその事実を確かめてもらっていました。
ここで考えたことが2つあり、一つは、食材は柔らかくなくてはならない決まりでもあるのか?ということ。あまり柔らかいものばかり食べていたら、顎のかむ力が弱くなるでしょーー!!もう一つは、食材の加工に使った味噌をどうするのか、ということ。番組では特に触れられていませんでした。あとで、インターネットで番組のHPを調べてみたら、「生肉を漬けたあとなので、味噌汁として使うには75度で1分加熱しなければなりません」という説明が申し訳程度にありました。でも、この事実を知らされてない視聴者は、加工に使った味噌を捨てちゃうことでしょう。
私の過去ログ(http://d.hatena.ne.jp/iirei/20051206)では、味噌は「塩分とたんぱく質を同時に摂れる貴重な食材」としていて、その視点からすると、使い捨てにされかねない調味料といった「ためしてガッテン」の扱い方には違和感を覚えます。
2つ目の目玉、味噌の香りを良くすることについては、HEMFとかHDMFとかの香り物質の説明がありましたが、古い味噌を加熱すればHDMFが増加し、いい香りになる、といった話が展開されていました。
以上の2つのテーマから読取れるのは、「ためしてガッテン」では、「味噌をグルメの道具、手段」と考えているらしい点です。味噌がテーマだから、味噌製造会社は喜ぶでしょうが、なんとも軽い扱い方で、命を支えうる「味噌」に失敬だろう、と思われるのです。
今日のひと言:世界には、柔らかな肉をクズ肉とみなす民族も存在します。チベット人が
そうで、彼らは固い肉を好んで食べるそうです。「明るいチベット医学」に
詳しいです。大工原彌太郎(だいくばら・やたろう)著・情報センター出版局・出版・1988年です。