虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

「椿三十郎」を見て

    *「椿 三十郎」を見て
 先ごろ、黒澤明監督の「椿三十郎」を見る機会を得ました。この時代劇は、水戸黄門とか大岡越前のような「予定調和」がありません。パターンに頼らない、というつくりです。
 発端は、正義感あふれるが少々足りない9人の若い武士が、荒れ寺で、大目付(おおめつけ:司法権を持つ)の悪事を暴き、囚われの身になっていた城代家老を救出する謀議をしていたことにあります。たまたまこれを聞いていたある素浪人が、彼らをサポートしながら、その目的を完遂させるというストーリーです。若い武士には若かりしころの加山雄三田中邦衛などが加わっていて、主役の椿三十郎三船敏郎です。
 「ある素浪人」と書いたのは、「椿 三十郎」は偽名だから。城代家老の妻娘を救出した際、名前を聞かれた「素浪人」は、たまたま「椿の花」が目についたので「椿」、おそらく30代だったので「三十郎」と名乗ったのだと思われるのです。そうとういい加減な態度ですねえ。結局、最後まで本名は不明です。
 この妻娘はそのように教育されていたのか、極めておっとりしていて、おおよそ非常時向きの性格ではありません。ただ、人を見る目は確かなようで、三十郎に対して、「名刀は鞘に収まっているもの。あなたはヌキミのギラギラした刀ですね。」と図星を衝かれ、三十郎は鼻白みます。この辺はかわいいですね。どーでもいいけど、椿三十郎は童貞だな、どうも。
 そして敵の本拠地が、川で庭園が繋がった上流の家だということが解り、そこに無数にいる敵の手勢を別の場所に引きつけ、敵の本拠を「虚」の状態にして「実」の9人が討ち入ることにします。その合図役を引き受けた三十郎は「家屋の炎上を合図と」しようとしますが、例の家老の妻娘が「椿の花が流れてきたら合図ということにしてはどうでしょう」と提案し、それに決まります。ただ彼女たちは「白い椿が流れてきたら」とか「赤い椿が流れてきたら」とも提案しますが、そのへんの取り決めはいい加減なまま、三十郎は敵地に乗り込む。さあ、どんな結末になりますか・・・・
 ストーリーはよく考え抜かれています。先の展開がなかなか読めないように出来ていて、「そろそろお銀の入浴シーン」・「そろそろ印籠」・・・といったようには「楽しむこと」はできません。でも、そうでないストーリー展開にこそドラマの醍醐味はあるのではないでしょうか。現在のTV時代劇は、やはり「老人の娯楽」でしかありません。昔の時代劇にはSFでいう「センス・オブ・ワンダー」があったように思います。なお、SFXが凝らされているから「優れた」映画であるわけでもありません。
この作品、原作は「日々安心」(山本周五郎


今日のひと言:三十郎は情報戦の大家で、剣の腕も立つ。もっとも現実の武士で両方兼ね備えた人はそうそうはいなかっただろうな。
       それはそうと、話題の「盗作問題」、「和田義彦  スギ」でグーグルで検索したら、6月1日で90件、2日で900件、3日で10000件のヒットがあった。一日に一桁づつ言及が増えている。