虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

マクロ経済学と計量経済学:宇沢弘文氏に捧ぐ

2014年9月、日本の誇る経済学者・宇沢弘文さんがお亡くなりになりました。「国民の幸福」というものを正しく理解された方だと愚考します。もとは東大理学部数学科で学び、研究室に残れ、と言われましたが、国民のための研究はできないか、と経済学の分野に進みました。以後アメリカのシカゴ大学に渡って研究・教育をしますが、「新自由主義」の大立者:ミルトン・フリードマンと激しい論争を交し、「シカゴ大学ゆかりの経済学者」に「優先して授与される」ノーベル経済学賞の受賞の目はなくなってしまいました。


もっとも宇沢さんは、そんなこと、屁とも思わなかったでしょうが、傍からみると、この不当な扱いは理不尽です。ちなみに、ノーベル経済学賞には、ノーベル文学賞の委員から「廃止を勧告する」声明が出されています。異常事態ですね。宇沢さん、晩年は「社会的共通資本」という概念を提出されていまして、文化勲章も受賞しておられました。(この点、ノーベル経済学賞の選考委員よりまともですね、文化勲章選考委員。)


さて、宇沢さんは「計量経済学」を得意としていましたが、普通にいう「マクロ経済学」とどう違うのでしょうか。

マクロ経済学」についてwikiから。

マクロ経済学(マクロけいざいがく、英: macroeconomics)は、経済学の一種で、個別の経済活動を集計した一国経済全体を扱うものである。


マクロ経済変数の決定と変動に注目し、適切な経済指標とは何か、望ましい経済政策とは何かという考察を行う。その主要な対象としては国民所得・失業率・インフレーション・投資・貿易収支などの集計量がある。またマクロ経済分析の対象となる市場は、生産物(財・サービス)市場、貨幣(資本・債券)市場、労働市場に分けられる。対語は、経済を構成する個々の主体を問題にするミクロ経済学


なお、マクロ経済とミクロ経済との二分法を最初に考案したのは、ノルウェーの経済学者ラグナル・フリッシュ。「ミクロ経済学」と「マクロ経済学」の用語をはじめて用いたのは、オランダの経済学者ウルフ。マクロ経済学の誕生は、1936年のジョン・メイナード・ケインズの著書『雇用・利子および貨幣の一般理論』に始まる。


あれー?この定義では環境問題、公害などの問題はなおざりになってしまいます。

そこで「計量経済学」についてもwikiから一部。


計量経済学(けいりょうけいざいがく、英: Econometrics)とは、経済学の理論に基づいて経済モデルを作成し、統計学の方法によってその経済モデルの妥当性に関する実証分析を行う学問である。・・・


この解説を読んだ限り、計量経済学とは、すでに出現している経済現象を、「批判的」に見直す、いわば「メタ・経済学」であると思われます。Macroeconomicsに対するEconometricsという名称がそのあり方を示しているのでしょう。


計量経済学におけるキーワード。そもそも計量経済学は環境問題を意識して打ちたてられた学問体系である。エコノミー(経済学)とエコロジー環境学)は本来同一の学問分野であり、資本や利子という概念が登場すると同時に別物になってしまった感がある。その流れを正道に戻すことが期待される。
 ある経済的主体が、外部の環境にマイナスの利益を与えているにも関わらず、そのツケを第三者に押付け転嫁することが、外部不経済の意味である。
この概念は、公害問題だけにとどまらず、以前の「耐震強度偽装問題」にも適用可能であると筆者は考えている。「経済主体」は、かならずしも供給側だけではないのでは、と思うのである。
 なお、「社会的費用」という言葉も、ほぼ同じ意味に使われる。
宇沢弘文氏の「自動車の社会的費用」は非常に有名。


以上は、私が編集した「はてなキーワード」で「外部不経済」。(最近書き換えられたようですが)


ただ、理科系だった私も、今は理系脳が衰え、計量経済学の実際を解説するのは困難です。少なくても、統計学の基礎、なかでも「最小二乗法」が重要です。関心ある方は、この際の引用元の「計量経済学」(wikipedia)をご覧ください。環境問題に切り込める唯一の経済学だと考えます。



今日のひとこと:経済学者としての宇沢弘文さんは、この手法を使って、水俣病、自動車の諸問題に切り込んだのですし、おなじく経済学者(元・京都大学物理学科)の室田武さんは、原発の問題を切ったのです。東電が公表している資料から、「原発で生み出されるエネルギーより、核廃棄物の保持・管理に掛るエネルギーのほうが、大きくなる」という事実を読み取られたのですね。理科系出身の人が経済学に乗りだすと、素晴らしい研究を残すこともあるという事例だと思います。聞いてるか、国賊竹中平蔵


社会的共通資本 (岩波新書)

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自動車の社会的費用 (岩波新書 青版 B-47)

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原発の経済学 (朝日文庫)

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今日の一品


@ゆばのさしみ



紀文の製品。普通の豆腐よりコクがある味わい。ワサビ醤油で食べました。美味しい。

 (2016.08.08)



@シシャモのレモンダレ



シシャモを焼き、レモン汁をかけました。もっともシシャモは希少で、この名前で出回っているのは、別の魚だそうです。

 (2016.08.08)



@鶏モモ肉のオーブントースター焼き



弟作。切ったもも肉を醤油、オイスターソースの混合タレに1、2時間漬け、180℃、10分焼きました。

 (2016.08.10)




今日の二句


静かなり
ロフォフォラの花
咲きにけり


ロフォフォラはサボテン(より正確にはカクタス)の仲間で、棘でなく毛が生える珍しい品種です。花は一日花

 (2016.08.08)






沢潟(おもだか)の
白い衣装で
稲に添う


沢潟は水田に生える野草。矢印のような葉と、白い花が特徴。栽培種(食用)としては慈姑(くわい)があります。

 (2016.08.10)