虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

イズミ鯛は鯛にあらず〜寄生虫の恐怖

 いつだったか、私はあるスーパーで、「イズミ鯛」の刺身を目にしました。身の見た目もなるほど鯛のようで、これも色々ある鯛の一種かと思い、購入、食卓に乗せましたが、あとでこの魚について調べてみると、これは海で獲れる鯛の仲間(黒鯛とか)の仲間ではなく、淡水魚のティラピアであることが解りました。養殖地は台湾。


 この魚、分類上はスズキ目に入っていて、その点は鯛と同類です。美味しいのは確かに美味しいのです。wikiに以下のように記載されています。

もともとアフリカと中近東に分布したが、食用にするため世界各地の河川に導入された。雑食性で淡水、汽水の様々な環境に適応するが、冷たい水には棲まない。ティラピアという名称は、日本に導入された3種がいずれも当時Tilapia属に分類されていたことに由来するが、現在ではそのうちの2種はOreochromis属に分類が変更されている。

だいたい淡水魚であるイズミ鯛を一時期スーパーや回転寿司で供していたということであり、淡水魚には寄生虫のいる可能性を無視するのは、感心できませんね。


淡水魚といえば、雷魚ライギョカムルチータイワンドジョウ)も生食は危険な魚です。いつか父が、川魚料理店で雷魚の刺身を食べたことがあるとカミング・アウトしたことがありますが、この魚、危険で難儀な寄生虫顎口虫(がっこうちゅう)の宿主になることが多いのです。WIKIでは

ライギョ雷魚)は、スズキ目タイワンドジョウ科に属するカムルチー Channa argus を指す日本での呼称だが、広義にはタイワンドジョウ科 Channidae に分類される魚の総称としても用いられている。


和名に「ドジョウ」の名があるが、コイ目・ドジョウ科に分類されるドジョウとは全く異なる。細長い体とヘビに似た頭部から、英語では"Snakehead"(スネークヘッド)と総称され、釣りや観賞魚の愛好家はこちらで呼ぶことも多い。日本には自然分布していなかったが、カムルチータイワンドジョウ、コウタイの3種が移入されている。


雷魚スズキ目の魚であり、おそらく食感もいいのでしょうが、これを刺身で食べるという感覚には付いていけません。その顎口虫症については、やはりWIKIから

顎口虫症(がくこうちゅうしょう、英:Gnathostomiasis)はヒトが顎口虫の幼虫が寄生した中間宿主を生食することにより感染する疾病。顎口虫は本来終宿主であるイヌやネコ、ブタなどの哺乳動物の胃壁などで成虫となるが、人の体内においては成虫になることができず、幼虫のまま皮下を移動し続け移動性の浮腫などの症状を引き起こす。まれに腸管出血、腸閉塞、血管中を移動し心筋梗塞などが報告される。


顎口虫の卵は水中で孵化し、第一中間宿主のケンミジンコに取り込まれる。これを捕食した第二中間宿主である淡水魚(カムルチーライギョ)、ドジョウ、フナ、ナマズブラックバスソウギョなど)や両生類、爬虫類の体内で成長する。これらを終宿主である哺乳動物が捕食するとその体内で成虫となり産卵する。


人の体内に入った顎口虫の幼虫は、胃壁や腸壁を破り体内に移行する。皮下組織内を移動した場合、爬行疹(寄生虫の這い回った痕跡)が外部から認められる。幼虫は長期間にわたり生存し続け、臓器、脊椎、脳、眼球に侵入することもある。脳や眼球に到達した場合、脳障害や失明といった重大な症状を引き起こすことがある。

このほかにも、淡水性の生物には危険なものがあります。かの美食の王様・北大路魯山人は、生煮えの田螺(タニシ)が美味しいと、よく食べていましたが、肝吸虫(むかしは肝臓ジストマと呼んだ)に感染し、寿命を縮めたそうです。(←これには異論もあるようですが。wikiで紹介されています。)


今日のひと言:淡水魚でも、鯉だけは「洗い(刺身)にできますが、この魚については寄生虫を無効にできる能力があると聞いたことがあります。(あくまで伝聞)もっとも、私は好んで洗いは食べません。また、海産物の「ホタルイカ」には踊り食いすると「旋尾線虫症」の恐れもあるらしく、産地の富山県では生食する習慣はないようです。また、鮭鱒類には「アニサキス」の恐れもあります。淡水の場合ほどでなくても、海産物にも注意を要するでしょうね。いつか、今はすでに潰れたスーパーで、ホタルイカを生で売っていました。注意すると「旬だから大丈夫!!」との元気な答えが返ってきました。これではスーパーも潰れるわな。


追記:海外旅行に行こうという人に対するアドバイスとして、その現地で「刺身」として出される魚は、「日本人は生の魚が好きだから」と、変な思いやりを以て出されることが多く、淡水魚も平気でさばかれるので、このような料理・刺身は食べないのが良いでしょう。


参考過去ログ:メジナの刺身
  http://d.hatena.ne.jp/iirei/20100322#1269215134


空飛ぶ寄生虫 (講談社文庫)

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魚介類に寄生する生物 (ベルソーブックス)

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今日の二句・・・青・赤二題

秋霖
それでも咲くや
露草か

 
露時に咲くのが普通なツユクサを見て。その子孫を残す努力に感嘆しました。秋霖(しゅうりん)とは、秋の長雨のことです。


一輪で
絵になるとかや
ルコウソウ


ルコウソウは、ヒルガオ科の雑草で、もとは園芸植物として輸入された植物です。赤花、白花の種類があります。朝顔を小ぶりにした感じです。この草については昨年も取り上げています。

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20110927#1317119400

  (2012.09.27)